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相談事例Q&A集詳細

Q.売主が一般法人事業者、買主が個人の場合、契約不適合責任はどう扱われますか。

消費者契約法が適用される場合には、契約不適合責任を負わないとする旨の特約は無効となります。

1 契約不適合責任を負わない旨の特約をすることは、民法上、可能です(民法第572条)。
しかしながら、消費者契約の場合には、消費者を保護する観点から、この点が修正されているため、注意が必要です。

2 消費者契約とは、「事業者」と「消費者」との間で締結される契約をいいます(消費者契約法2条3項)。
消費者契約法が規定する「事業者」とは、法人その他の団体、及び事業として又は事業のために契約の当事者となる個人をいいます(消費者契約法2条2項)。まず、法人は、「事業者」となり、個人のなかでも、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合には、「事業者」となります。
また、同法が規定する「消費者」とは、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く個人をいい(消費者契約法2条1項)、法人および「事業者」に該当する個人は、「消費者」になりません。「事業者」に該当しない個人が、「消費者」となります。

3 売主が「事業者」、買主が「消費者」である不動産売買契約は、消費者契約となり、消費者契約法が適用されます。
消費者契約法が適用される結果、売主(事業者)の損害賠償義務を免除する特約は、原則として無効となります(消費者契約法8条1項1号、2号)。したがって、特約において売主は契約不適合責任を負わない旨定めた場合でも、その特約は無効となります。もっとも、契約不適合の場合に、売主(事業者)が追完義務・代金減額義務を負う場合には、損害賠償義務を免除する特約を締結することも可能です(消費者契約法8条2項1号)。
また、特約により、買主(消費者)が契約不適合の場合の解除権を放棄させたとしても、その特約は無効となります(消費者契約法8条の2)。
さらに、買主(消費者)の権利を制限し、義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する特約は、無効となります(消費者契約法10条)。例えば、買主(消費者)が契約不適合責任を追及できる期間を極端に短くするような特約は、無効となります。ここで責任期間を極端に短くするというのは、どの程度のことをいうのでしょうか。この点については、東京地裁平成22年6月29日判決のケースが参考になります。同ケースは、売主(宅建業者ではない。法人=事業者)と買主(消費者)が土地売買契約を締結したところ、土地の引渡後に土壌調査を行った結果、環境基準を超える鉛が検出されたというものです。同土地売買契約には、特約として、瑕疵担保責任の追及は引渡日から3か月以内とする旨が定められていました。ところが、買主から売主に対する瑕疵担保責任の追及は、引渡日から3か月以上が経過してしまった事例でした。同判決は、本事例において、瑕疵担保責任の追及を3か月以内とする旨の特約は、消費者契約法10条に違反して無効であると判断されました。

参照条文

民法

(担保責任を負わない旨の特約)
第572条
 売主は、第562条第一項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。


消費者契約法

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
第8条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
2 前項第一号又は第二号に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合には、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき。)。以下この項において同じ。)に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除し、又は当該事業者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一 当該消費者契約において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該事業者が履行の追完をする責任又は不適合の程度に応じた代金若しくは報酬の減額をする責任を負うこととされている場合

(消費者の解除権を放棄させる条項等の無効)
第8条の2 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させ、又は当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、無効とする。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

監修:善利法律事務所 善利 友一 弁護士
 
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