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相談事例Q&A集詳細

Q.一筆の土地が、4人の共有名義となっています。この土地を売却処分したいと考えていますが、共有者の1人がこれに同意しません。この土地を処分するには、どうすれば良いでしょうか。

共有者間で十分話し合うことが必要です。もっとも、話し合いによってはどうしても解決できない場合には、共有物分割請求をすることが考えられます。

1 共有している一筆の土地を売却処分するためには、共有者全員の同意が必要です。
本件では、共有者の1人が売却処分に同意していませんので、このままでは、本件土地を売却することができません。
まずは、共有者同士で話し合い、合意を目指すことになります。

2 なかなか共有者同士の話し合いが進まない場合に、媒介業者が、売却に反対している共有者に対して、手紙を送ることがあります。
それでは、媒介業者が、売却に反対している共有者に対して、売却を勧める手紙を送ることは、非弁行為に該当しないのでしょうか。
この点について、弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件その他一般の法律事件に関して代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができません(弁護士法第72条)。このような行為を非弁行為といい、罰則の対象となります。
媒介業者としては、非弁行為とならないよう、手紙を送る際には、報酬を受け取る目的では行わず、法律事件・法律事務に該当しないようあくまで不動産売却の意思がないか確かめる形で手紙を送ると良いと思います。

3 売却に反対している共有者が、説得にもかかわらず翻意しない場合、共有者全員の同意が得られず、土地を売却できません。
このように、共有者の間で共有する土地の処分について争いが生じた場合には、共有物の分割請求も1つの解決策となります。
複数人が土地を共有している場合、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法256条1項本文)。
各共有者は、他の共有者に対して、共有物の分割について協議を持ちかけることができます。そして、共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、共有物分割を裁判所に請求することができます(民法258条1項)。
裁判所における共有物の分割方法には、いくつかの方法があります。
裁判所は、共有物分割訴訟においては、原則として、現物分割を行います。
もっとも、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、競売を命ずることができます。
また、裁判所は、共有物について、共有者のうちの1人の単独所有とし、その者から他の共有者に対して持分相当額を賠償させるという、全面的価格賠償の方法による分割をすることもできます(最高裁判所平成8年10月31日判決)。

4 本件においては、一筆の土地の売却について、どうしても共有者全員の同意が得られない場合には、共有物分割訴訟を提起し、全面的価格賠償の方法により解決することも有用だと思います。


参照条文

弁護士法

(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)
第72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。


民法
(共有物の分割請求)
第256条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。


(裁判による共有物の分割)
第258条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。



参考裁判例
最高裁判所平成8年10月31日判決
当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。

監修:善利法律事務所 善利 友一 弁護士
 
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