Q.大学生の息子が昨年9月から1年契約更新のワンルームマンションを賃借しています。ところが、今年5月、大家から家賃の増額を交渉されています。家賃の増額に応じられなければ、賃貸借契約の更新をしない旨通知されています。家賃の増額に応じなければなりませんか。
賃貸借契約の当事者は、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができます(借地借家法第32条1項)。
したがって、大家は、家賃の増額を交渉することはできます。もっとも、家賃を増額するか否かは交渉であり、交渉で合意ができなかった場合には、最終的には、裁判所で判断を受けることになります。
相談者の息子としては、家賃増額を拒否し、争うことができます。昨年9月に賃貸借契約を締結してからまだ約9か月しか経過していないことに照らせば、家賃が増額される可能性は低いと思います。
また、本件賃貸借契約には借地借家法の適用がありますので、更新拒絶には正当事由が必要です(借地借家法第28条)。
家賃の増額に応じないことだけでは正当事由は認められませんので、更新拒絶が認められる可能性は低いでしょう。
借地借家法第三十二条
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
同法第二十八条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。