Q.私は、息子に対して、土地を無償で使用させており、息子は、同土地上に建物を建築し家族とともに居住していました。ところが、息子は急死してしまい、同建物には息子の妻だけが住むようになりました。息子の妻とは昔から折り合いが悪いのですが、建物を収去し土地を明け渡してもらうことはできますか。
相談者が息子に対して土地を無償で使用させていることは、建物所有を目的とする使用貸借契約であると考えられます。
使用貸借契約は、一般的に、借主の死亡によって終了します(民法第597条3項)。
しかしながら、例外的に、建物所有を目的とする土地の使用貸借契約においては、建物所有の目的が重視されるべきであるため、特段の事情のない限り、建物所有の用途に従ってその使用を終えたときに返還の時期が到来するものと解すべきであり、借主が死亡したとしても土地に関する使用貸借契約が当然に終了することにはならないとの裁判例があります(東京地方裁判所平成5年9月14日判決)。
かかる裁判例に従えば、本件建物には息子の家族がまだ住んでおりますので、息子が他界したとしても、建物所有を目的とする使用貸借契約は終了しておらず、建物収去土地明渡請求は認められないことになります。
民法第五百九十七条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。