「親から田舎の土地を相続したけど、使う予定もないから売りたい」「実家が親名義のままなのに、誰も住んでいないのに固定資産税だけ払い続けている」「将来、子どもに迷惑がかかるから、今のうちに整理しておきたい」
こんな相談がここ数年で増えています。2024年4月から相続登記が義務化された影響で、ずっとそのままにしていた土地と向き合わないといけなくなった人が多いようです。
愛知県は、全国的に見ると地価が安定している地域です。2026年の公示地価では、愛知県の住宅地は去年に比べて1.8%上がり、5年連続で上昇しています。名古屋市では、16区すべてで地価が上がりました(出典:国土交通省「令和8年地価公示」)。
でも、実際には「二極化」が進んでいます。名古屋市の中心部や駅の近くは地価がしっかり上がっていますが、奥三河(新城市・北設楽郡など)や知多半島の先端、渥美半島のような郊外や山間部では、地価が下がったり横ばいのままだったりする場所がたくさんあります。
つまり、同じ愛知県内でも、名古屋市内の土地と「田舎の土地」では、市場も、買う人も、売り方も、全く違ってくるんです。
「田舎の土地は売れない」と諦めるのは早いです。売れないのではなく、売れない状態で売りに出しているケースがほとんどだからです。
この記事では、住宅業界に詳しいファイナンシャルプランナーとして、これまで培ってきた実務経験や知見をもとに、
- 田舎の土地を売る5つの方法
- なぜ売れないのか、どうすれば売りやすくなるのか
- 売却の流れ
- 相続・共有名義・山林の場合の注意点
- 最終手段として手放す方法
までを、一通り説明します。この記事を読めば、「自分の土地はどうすればいいか、まず何から始めればいいか」がわかるはずです。
1.田舎の土地を売りたい!売却のための5つの方法
まずは、田舎の土地を売る方法を5つ整理します。それぞれの特徴を比べてみましょう。
| 売却方法 | 期待できる価格 | 現金化までのスピード | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 地元業者に仲介 | ○ 相場前後 | △ 数ヶ月〜 | 地縁の買い手情報と法規制の知識が強み。基本の方法 | まず誰もが最初に検討すべき |
| 業者による買取 | △ 相場の6〜8割 | ◎ 数週間 | 契約不適合責任が免責されることが多い | 早く現金化したい・遠方の人 |
| 隣地への打診 | ◎ 相場以上 | △ 相手次第 | 隣地所有者にとってだけ価値が高い場合がある | 隣人と面識・関係がある人 |
| 空き家バンク | ○ 相場前後 | △ 読めない | 無料。移住希望者に届く。仲介と併用が正解 | 移住需要のある地域の人 |
| 寄付・無償譲渡 | × 0円 | △ 相手次第 | 贈与税や登記の注意点あり。最終手段 | どうしても売れなかった人 |
①地域の不動産会社に仲介を依頼する
不動産会社が物件の売却を手伝う「仲介」という方法があります。これは一番基本的なやり方で、特に田舎の土地を売るなら、その地域で長くやっている不動産会社に頼むと良いでしょう。
メリット
田舎の土地を地元の不動産会社に頼むと、近所の農家さんや地元の工務店、資材置き場を探している会社など、土地を買ってくれそうな人たちの情報を持っていることがあります。また、市街化調整区域や農地のような、その地域特有の難しいルールについても詳しい人が多いです。遠くに住んでいる場合でも、不動産会社が代わりに現地案内をしてくれたり、草刈りをしてくれたりすることもあります。
デメリット
不動産会社によって得意な物件が違うので、どこに頼むか選ぶのが少し大変かもしれません。また、売却が成功したときには、仲介手数料がかかります。
正直なところ、大きな不動産会社は、都心部や駅の近くにある物件に力を入れることが多いです。田舎の土地だと、査定はしてくれるけれど、あまり積極的に動いてくれないということもよくあります。
田舎の土地こそ、その市町村で長くやっている会社の「地道な情報収集力」や、地域の人たちとのつながりが頼りになります。実際に、インターネットの物件サイトに半年載せても全然問い合わせがなかった土地が、地元の不動産会社が「以前から資材置き場を探していた」建設会社を紹介したことで、1ヶ月で話が決まったという例もあります。
②不動産会社に直接買い取ってもらう(買取)
不動産会社が直接買い取ってくれる方法です。
メリット
買い手を見つける手間がいらないので、早ければ数週間でお金に換えられます。売った後に家の不具合が見つかったとしても、売主が責任を負わない契約が多いので、売った後の心配も少ないです。仲介手数料がかからない場合もあります。
デメリット
売る値段が、不動産屋に仲介してもらう場合と比べて、相場の6割から8割くらいになるのが一般的です。そもそも、あまり人気のない土地だと、買い取ってもらえないこともあります。
遠くに住んでいて何度も物件を見に行けない人や、相続税を払う期限が迫っている人には、良い方法だと思います。不動産屋に仲介してもらった場合の値段と、直接買い取ってもらう場合の値段の両方を聞いて、「時間」と「お金」を比べて決めるといいでしょう。
また、土地の場所や形、道路との接し方、建物の状態などによっては、仲介では買い手が見つかりにくいこともあります。売れるまでに時間がかかる可能性や、その間の管理負担といったリスクも含めて考えることが大切です。
ファイナンシャルプランナーの立場から見ると、売るのが1年遅れると、その間の固定資産税や草刈り費用も結構な出費になります。それらを差し引くと、直接買い取ってもらった方が、手元に残るお金が多いということもあります。
③隣地の所有者に買い取りを打診する
田舎で土地を探している人の中で、一番有力なのは案外「お隣さん」だったりします。自分の土地とくっついたら、庭や駐車場を広げたり、畑を拡張したり、車が通りやすくしたりできます。隣の土地を持っている人にとっては、普通の値段より高くても欲しい場合があります。だから不動産屋さんの間では、「隣の土地は倍の値段を出してでも買う価値がある」なんて昔から言われているんです。
メリット
相場と同じくらいの値段、もしくはもっと高く売れる可能性があること。それに、お客さんを探す手間もいりません。
デメリット
個人で直接交渉すると、値段のことや土地の境目、契約の条件などで揉めやすい。もし断られてしまったら、ご近所付き合いが気まずくなるリスクもあります。
隣の人に声をかけること自体は、自分でやっても問題ありません。ただ、話が具体的になってきたら、契約は不動産会社に間に入ってもらった方が安全です。
それと、これは実際にやってみると効果があるのですが、まだ売ると決めていない段階でも、帰省したときに隣の方へ「将来、この土地をどうしようか考えていまして」と一言伝えておくと、いざというときの話が驚くほどスムーズに進みます。相手の方も「いつか買えたらいいな」と思っていた、というケースは案外多いんです。
④空き家バンク・空き地バンクに登録する
市町村などの自治体が運営している、土地や家を売りたい人と買いたい人(主に移住を考えている人)をつなぐ仕組みです。愛知県内でも多くの市町村がやっていて、奥三河や知多・渥美の方面では、移住や二拠点生活を考えている人との縁がまとまった実績もあります。
メリット
無料で登録できます。しかも「田舎で暮らしたい」というはっきりした目的を持った人に情報が届くのが強みです。自治体を通しているという安心感もあります。
デメリット
いつ売れるかは全く読めません。それから、自治体は値段の交渉や契約の手続きまではやってくれないので、結局は提携している不動産会社に間に入ってもらうことが多いです。
空き家バンクは「他の方法と一緒に使う」のが正解です。不動産会社への仲介の依頼と空き家バンクへの登録は、両方同時にできることが多いので、売るための窓口をひとつ増やすくらいの感覚で使うといいと思います。
⑤自治体・法人への寄付や個人間売買
「売れないなら、いっそ寄付したい」という相談もよく受けます。ただ、自治体への寄付は、公園にする予定があるなど、はっきりした使い道のある土地でない限り、基本的に断られてしまいます。自治体からすると、使い道のない土地を引き受けても、管理の手間が増えて税収が減るだけだからです。
知り合いや親族との個人間の売買は、仲介手数料がかからない反面、土地の境目の認識のズレや、契約書の不備でトラブルになりやすい方法です。それに、相場よりずっと安い値段で売ると、その差額が「みなし贈与」とされて、買った側に税金がかかってしまう可能性もあります。
安い土地であっても、契約書の作成と重要なポイントの確認だけは、不動産会社か司法書士に頼むことをおすすめします。
2.田舎の土地はなぜ売れない?
売りやすくするコツをお伝えする前に、そもそもどうして田舎の土地は売れにくいのか、整理しておきましょう。理由は大きく5つあります。
理由1:需要の絶対数が少ない
人口が減っている地域では、土地を買って家を建てようという世帯自体が減っています。田舎の土地の売却は、「数少ない買い手を、どうやって見つけるか」の勝負なんです。
理由2:法規制で建物が建てられない
市街化調整区域や農地、災害の危険がある区域などでは、家を新しく建てることが原則できなかったり、許可のハードルが高かったりします。
愛知県は市街化調整区域や農業振興地域が県内に広く分布していて、名古屋の近くでもこれに当てはまる土地がとても多いのが特徴です。「名古屋まで車で30分なのに、家が建てられない」という土地は珍しくありません。
理由3:土地の状態が悪い
境界の杭がない、測量図が古い、ボロボロの空き家が残ったまま、雑草や置きっぱなしの荷物で荒れている。こういう、買い手の不安と手間を増やす要素が積み重なっています。
理由4:価格が相場とズレている
先祖代々の土地への思い入れや、昔は高かった記憶があるせいで、つい高めの値段で売りに出してしまい、そのまま売れ残るパターンです。売れ残っている期間が長くなるほど「何か問題のある土地なのかな」と敬遠されて、ますます売れなくなるという悪循環に陥ります。
理由5:インフラ・接道の問題
上下水道が来ていない、前の道路が建築基準法上の道路ではなくて建て替えができない、土地に入るための道が他人の名義になっている、といった問題です。
逆に言えば、こうした障害をひとつずつ片づけて、数少ない買い手にきちんと情報を届けられれば、田舎の土地でも売れる確率はぐっと上がります。次の章で、具体的なコツを見ていきましょう。
3.田舎の土地を売りやすくするコツ
適正な売り出し価格を設定する
一番大事なコツです。不動産は、「売り出した値段=売れる値段」ではありません。
中部レインズの統計を見ると、愛知県の土地(100〜200㎡)では、2026年4〜6月期の売り出し価格(新規登録価格)の平均が2,417万円だったのに対し、実際に成約した価格の平均は2,194万円。約1割の差が出ています(出典:中部レインズ「季刊サマリーレポート」(2026年4〜6月期)。売り出しと成約は同一物件の比較ではなく、それぞれの平均値です)。これは愛知県全体の平均ですから、買い手の少ない田舎の土地では、この差はもっと開きやすくなります。
売り出し価格が相場からズレていると、問い合わせが来ないまま時間だけが過ぎて、結局大きく値下げすることになりがちです。最初から適正な値段で出した方が、早く、しかも高く売れる。これが鉄則です。
相場の調べ方(無料で使える一次情報)
| 不動産情報ライブラリ (国土交通省) |
実際に取引された価格を、地域や時期で絞って検索できます。近所の土地が「いくらで売りに出されたか」ではなく「いくらで売れたか」がわかるのが、一番の価値です。 |
|---|---|
| 地価公示・ 都道府県地価調査 |
毎年公表される、いわば地価の定点観測です。売りたい土地の近くの地点の価格と、上がっているのか下がっているのかを確認しましょう。 |
| レインズ・マーケット・ インフォメーション |
全国のレインズに登録された成約情報を、一般の人でも見ることができます。 |
| 固定資産税評価額・ 相続税路線価からの逆算 |
固定資産税評価額は時価のだいたい70%、路線価は80%を目安に決められているので、「評価額÷0.7」「路線価÷0.8」で、おおよその時価を逆算できます。ファイナンシャルプランナーの実務でもよく使う、簡単な計算方法です。ただ、買い手の少ない地域では、この計算上の値段より実際の相場が安いこともよくあるので、そこは注意してください。 |
なお、近くで売買の例が少ない土地の場合、机の上の計算よりも、地元の不動産会社が肌感覚で知っている相場の方が正確だったりします。自分で調べた相場観を持ったうえで査定を受けると、不動産会社の説明が妥当かどうかも判断しやすくなります。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定は、必ず複数の会社に頼みましょう。比べるポイントは、査定額の高さだけではありません。それよりも大事なのは、「どんな人が買ってくれそうで、どうやって売るのか」という販売戦略の説明です。また、担当者の人柄や対応に安心できるか、提案内容に納得できるかも大切な判断基準です。
田舎の土地は、査定の根拠になる近所の成約例が少ないので、会社によって出てくる値段の差が都市部より大きくなります。中には、相場より明らかに高い査定額で契約を取っておいて、後から値下げを迫ってくる会社も、残念ながら存在します。「査定が高い=良い会社」ではない、と覚えておいてください。
境界を確定させておく
田舎の土地は、境界の杭がなかったり、公図と実際の状態がズレていたりすることが多く、これは買い手が一番不安に感じるところです。土地家屋調査士に頼む確定測量には数十万円かかりますが、「境界確定済み・確定測量図あり」というのは、それだけで強力なセールスポイントになります。
測量には隣の土地の持ち主の立会いが必要なので、その方が遠くに住んでいたり高齢だったりすると時間がかかります。売ると決めたら、早めに動き出しましょう。
広すぎる土地は分割(分筆)を検討する
田舎では数百坪の土地も珍しくありませんが、広すぎると値段の総額が大きくなって、個人の買い手には手が届かなくなります。2〜3区画に分けて1区画あたりの値段を下げれば、買える人の幅が広がることがあります。
ただし、分けるには測量の費用がかかりますし、農地や市街化調整区域では、そもそも分けること自体に制限がある場合もあります。また、分けた土地を複数の人に売る場合は、売却の目的や売り方などによって、不動産の売買を「業」として行っているとみなされ、宅地建物取引業の免許が必要になる可能性があります。分筆して売り出す前に、必ず先に不動産会社へ相談してください。
古家付きの場合、解体を検討する
古い空き家が残ったままだと、買い手は解体費用(木造なら1坪あたり3〜5万円くらいが目安です)を頭に入れて、その分の値引きを求めてきます。更地の方が買った後のイメージも湧きやすく、早く売れることが多いです。
ただし、解体するのは「売り方の方針が決まってから」。これが鉄則です。理由は2つあります。
- 建物を壊すと固定資産税の「住宅用地の特例」(200㎡までの部分は税金の元になる金額が6分の1になる仕組み)が使えなくなって、翌年から土地の固定資産税が上がってしまうこと
- 市街化調整区域では「もともと建物があること」が、建て替えの許可をもらう根拠になる場合があること
先に壊してしまうと、家を建てられる土地として売る道を、自分で断ってしまうことになりかねません。ここだけは絶対に自己判断せず、壊す前に地元の不動産会社へ確認してください。
土地の情報をできるだけ詳しく開示する
上下水道や都市ガスが引き込まれているか、前の道路の種類や幅はどうか、昔は何に使われていたか(畑だった、資材置き場だった等)、ハザードマップではどんな位置づけか、地中に何か埋まっていないか。情報が多ければ多いほど、買い手は安心して検討できます。
都市部と違って比べる物件が少ない田舎の土地では、情報の充実度がそのまま信頼につながるんです。都合の悪い情報も先に伝えておいた方が、売った後に「聞いていなかった」と責任を問われるトラブルを防げます。
草刈りや片づけを行い見栄えを良くする
現地を見に来た買い手の第一印象は、値段の交渉に直結します。腰の高さまで雑草が茂った土地と、きれいに刈られた土地では、同じ土地でも印象がまるで違います。
年に2〜3回の草刈りだけでも効果は大きいです。シルバー人材センターなどに頼めば費用も比較的安く済みますし、遠方にお住まいなら、不動産会社を通じて手配できることもあります。
購入後の利用イメージを提案する
「家庭菜園付きの週末住宅に」「資材置き場や車庫用地に」「トレーラーハウスやキャンプ用地に」「貸農園や太陽光用地に」。広告にこうした使い道の提案が一言あるだけで、問い合わせの入り方が変わります。
買い手は、「この土地で何ができるか」がイメージできないと動かないものです。地元の不動産会社は「この地域では今、どんな使い道に需要があるか」を肌感覚で知っているので、ここでも地域密着の強みが生きてきます。
4.田舎の土地売却の流れ
田舎の土地売却の6ステップ
-
書類と権利関係の確認
登記簿謄本・公図・測量図・納税通知書を揃える
ポイント:親名義のままなら先に相続登記 -
法規制を調べる【最重要】
市街化調整区域・農地・建築規制に当たるか確認
ポイント:該当しそうなら、この時点で地元業者に相談 -
査定依頼・媒介契約
複数社の査定と販売戦略を比較
ポイント:「査定が高い=良い会社」ではない -
売却活動
サイト掲載・レインズ登録・測量・草刈り
ポイント:3〜6ヶ月ごとに価格と売り方を見直す -
売買契約・許可手続き
重要事項説明を経て契約
ポイント:農地は農業委員会の許可が条件(1〜2ヶ月) -
決済・引渡し・確定申告
登記して引渡し。利益が出たら翌年申告
ポイント:売る前に手残りの試算を
(1)権利関係・書類の確認
登記簿謄本(登記事項証明書)、公図、地積測量図、固定資産税の納税通知書を揃えて、名義・面積・抵当権の有無を確認します。名義が亡くなった親のままなら、売る前に相続登記が必要です(詳しくは第5章で説明します)。
(2)土地の法規制を調べる【田舎の土地はここが最重要】
その土地が市街化調整区域なのか、農地なのか(農地の中でも、農業振興地域の農用地区域、いわゆる「青地」かどうか)、建築の規制がある区域なのか。これによって、売却の難易度も必要な手続きも大きく変わります。
市街化調整区域では原則として新しく家を建てられませんし、農地は農地法の許可や届出なしには売買そのものができません。青地の農地なら、宅地にするには「農振除外」という時間のかかる手続きが先に必要になります。
少しでも当てはまる可能性があるなら、この段階で、建築の許可や農地転用の実務に詳しい地元の不動産会社に相談してください。「いくらで売れるか」の前に、「買った人がその土地を使えるのか」をはっきりさせること。これが田舎の土地売却の成否を分けます。
愛知県は調整区域や農地の割合が高く、市町村によって許可の運用にも差があるので、地域の実務を知っている会社の存在価値がとりわけ大きいエリアなんです。
(3)査定依頼・不動産会社の選定・媒介契約
複数の会社の査定と販売戦略を比べて、納得できる会社と媒介契約を結びます。媒介契約には一般・専任・専属専任の3種類があります。田舎の土地は扱える会社自体が限られるので、地域の有力な1社と専任媒介を結んで、レインズへの登録を通じて他の会社にも情報を流してもらう形が、うまく機能しやすいと感じています。
(4)売却活動
物件サイトへの掲載、レインズへの登録、現地の看板、地縁での声かけなどを並行して進めます。必要に応じて、確定測量や草刈り、残置物の片づけもこの期間にやってしまいましょう。
レインズの統計では、買い手の多い首都圏の土地でも、登録から成約まで平均79日(2023年)かかっています(出典:東日本不動産流通機構)。地方や郊外なら、もっと長くかかるのが普通です。田舎の土地は時間がかかる前提で、3〜6ヶ月ごとに値段や売り方を見直す計画を、最初に立てておきましょう。
(5)売買契約・(必要な場合)許可手続き
買主が決まったら、重要事項説明を経て売買契約を結びます。農地の場合は、農業委員会の許可(耕作目的なら農地法3条、転用目的なら5条)が下りることを条件にした契約(停止条件付き契約といいます)になるのが一般的で、許可までは1〜2ヶ月ほどかかります。
(6)決済・引渡し・確定申告
残りの代金を受け取るのと同時に、司法書士の立会いのもとで所有権移転登記をして、引渡し完了です。売却で利益が出た場合は、翌年に確定申告が必要です。
税率は、持っていた期間が5年を超えていれば約20%、5年以下なら約39%。相続した土地なら、持っていた期間は亡くなった方が取得したときから通算できます。ただ、いくらで買ったかわからない土地は、売却額の5%を取得費とみなす「概算取得費」で計算することになるので、先祖代々の土地は思ったより税金が大きくなりがちです。
ファイナンシャルプランナーとしては、売る前に「手元にいくら残るか」を試算しておくことを強くおすすめします。
5.相続した田舎の土地を売りたい場合の注意点
相続登記は義務です
2024年4月から義務化されていて、相続で不動産をもらったと知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります。義務化される前に相続した分も対象です。そして何より、名義が亡くなった方のままでは、売ること自体ができません。
遺産分割協議を先に固める
相続人が複数いるなら、遺産分割協議を先に固めましょう。誰がその土地をもらうのかを遺産分割協議書で確定させてから、登記と売却に進みます。売ってお金を分ける前提なら、代表者がいったん相続して、売った後に分配する「換価分割」という方法があります。協議書にその旨をきちんと書いておけば、贈与税の問題も避けられます。
数代前の名義のままなら早めに専門家へ
祖父母やもっと前の代の名義のまま放置された土地は、法定相続人が数十人に膨らんでいることもあります。全員の同意を集めるのは時間との勝負なので、司法書士と連携できる地元の不動産会社に、できるだけ早く相談しましょう。
税制の特例を確認する
相続税を納めた方は、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売れば、納めた相続税の一部を取得費に足せる「取得費加算の特例」で、譲渡所得税を減らせる可能性があります。また、亡くなった方が一人で住んでいた古い家とその土地を売る場合、条件を満たせば利益から最大3,000万円を差し引ける「空き家特例」が使えることもあります。
ファイナンシャルプランナーの視点で言うと、売る時期はこうした特例の期限から逆算して決めるのが鉄則です。
調整区域・農地なら初動から地元業者へ
相続した土地が市街化調整区域や農地に当てはまりそうなら、最初から地元の不動産会社に相談してください。誰に、どうやって売れるのかという見立て自体に、専門知識が要るからです。相続登記と並行して、建築許可や農地転用に詳しい地元の会社に相談を始めておけば、登記が終わったらすぐに売却活動へ移れます。
6.共有名義の田舎の土地を売りたい場合の注意点
相続をきっかけに、兄弟姉妹での共有名義になっている田舎の土地は非常に多くあります。
売却には共有者全員の同意が必要
共有の土地全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。持分の多数決ではなく、全員です。一人でも反対すれば売れません。
費用負担も先に話し合う
確定測量費や解体費、草刈り費などは、原則として持分の割合に応じて負担します。「誰がいくら払うか」を曖昧にしたまま進めると、決済の直前になって揉める原因になります。
連絡の取れない共有者がいる場合
2023年の民法改正で、行方のわからない共有者がいても、裁判所の関与のもとでその持分を取得したり処分したりできる制度ができました。司法書士や弁護士に相談する価値があります。
意見がまとまらない場合の選択肢
- 自分の持分だけを他の共有者に買い取ってもらう
- 持分のみを買取業者に売る(ただし価格は大きく下がります)
- 共有物分割請求(最終手段として裁判所の手続きで分割・換価を求める)
売却の窓口を代表者1名に決めて、他の共有者から委任状をもらう形にすると、手続きが格段にスムーズになります。全員が集まるお盆や年末年始に、方針を決めてしまうのがおすすめです。
7.田舎の山林を売りたい場合の注意点
相場が極めて低い
山林は、宅地とは相場の桁がまったく違います。場所や木の種類にもよりますが、1坪あたり数十円から数百円ということも珍しくありません。「固定資産税評価額よりも安くしか売れない」ことも普通にあります。
境界が不明確
山林は隣との境界をはっきりさせるのが事実上難しいことが多く、尾根や沢を目安にした「境界非明示」という形で取引されることもあります。買い手にとっては大きな不安要素です。
法規制に注意
保安林に指定されていると、木を切ることや開発が厳しく制限されていて、指定の解除は原則できません。また、面積に関係なく、森林の土地を買った人には市町村への届出義務があります(森林法の「森林の土地所有者届出制度」です)。
立木の価値も確認
手入れされたスギやヒノキの人工林なら、立っている木に多少の値段が付くこともあります。地域の森林組合に相談すると、状況を把握できますよ。
売り先の探し方
隣の山林の持ち主、林業の事業者、山林専門の買取業者、キャンプ場用地を探している個人などです。一般の物件サイトにはなかなか載らない分野なので、山林を扱った経験のある地元の会社に相談するのが、結局は近道です。
8.田舎の土地が売れない場合に手放す方法
相続土地国庫帰属制度
相続や遺贈でもらった土地を、法務局の審査を経て国に引き取ってもらえる制度です(2023年4月に始まりました)。
法務省の統計によると、2026年6月末時点で、申請5,698件に対して、実際に国に引き取られたのは2,885件です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の運用状況」)。制度が始まって約3年、全国合計でこの件数です。全国に膨大にある「使わない土地」の数を考えると、誰でも使える出口ではないことがわかると思います。
利用のハードルは主に次の点です。
| 申請できない土地 | 建物がある土地、担保が付いている土地、境界がはっきりしない土地、他人の通り道になっている土地など |
|---|---|
| 承認されない土地 | 崖地や、管理に大変な費用と手間がかかる土地、地中に何か埋まっている土地など |
| 費用 | 審査手数料(土地一筆あたり1万4,000円)に加えて、承認された場合は10年分の管理費に相当する負担金(原則20万円から。市街化区域の宅地や農地は面積に応じて増えます)を納める必要があります。 |
つまり、「建物を壊して、境界を整理して、お金を払って」ようやく国に引き取ってもらう制度なんです。条件の確認だけでもかなりの手間と費用がかかるので、「もう国庫帰属しかない」と思い込む前に、まず地元の不動産会社に「本当に売れないのか」を確認することを強くおすすめします。「売れるはずがない」と思われていた土地に、隣の人や地元の事業者の買い手が付いた例は少なくありません。国庫帰属は、民間で買い手を探し尽くした後の最終手段、と位置づけるのが正解です。
無償譲渡(0円で譲る)
「タダでもいいから引き取ってほしい」という場合の選択肢ですが、タダならではの注意点があります。
もらう側に贈与税
個人間の無償譲渡は税務上の「贈与」にあたるので、土地の評価額が基礎控除(年110万円)を超えると、受け取った側に贈与税がかかるんです。「タダであげたのに、相手が税金を払う」という、ちょっと不思議な構図になります。ちなみに、法人にタダで譲った場合は、譲った側の個人に「時価で売ったとみなす」課税が生じるリスクもあります。
もらう側に維持負担
もらう側には毎年の固定資産税と管理の責任が発生します。だからこそ、タダでも引き受け手を探すこと自体が、実は簡単ではないんです。
契約と登記は省略しない
タダであっても、贈与契約書の作成と所有権移転登記は省略しないでください。ここを曖昧にすると、将来の揉めごとの種になります。
そして一番お伝えしたいのは、「無償譲渡を考えるほどの土地でも、実は値段が付くことがある」という点です。地元の不動産会社に相談すれば、少額での買取や、隣の方への低額での仲介など、「0円より良い条件」の道が見つかることは珍しくありません。手放し方を最終決定する前に、一度、査定だけでも受けてみてください。
9.田舎の土地売却についてのよくある質問
使っていなくても、固定資産税と管理の負担は毎年続きます。雑草が茂ったり、ゴミを不法投棄されたり、木が倒れたりして近所に損害を与えれば、持ち主として責任を問われる可能性もあります。名義をそのままにして相続が繰り返されると、相続人がどんどん増えて、いざ売るときの手間と費用が跳ね上がります。しかも相続登記が義務化されて、放置そのものが過料のリスクを伴う時代になりました。「使わない」と決めた時点が、売り時であり動き時です。
最初の相談先は、その土地のある地域に詳しい不動産会社です。特に市街化調整区域や農地の可能性がある土地は、地域ごとの許可の運用を知っている地元の会社でないと、正確な見立てができません。相続登記がまだなら司法書士、税金の試算なら税理士と、他の専門家の力も必要になりますが、地元の不動産会社を起点にすれば、連携している専門家を紹介してもらえるのが普通です。窓口をひとつにまとめられるという意味でも、まずは地元の会社への相談をおすすめします。
主な費用は、仲介手数料、確定測量費、必要に応じた解体費や残置物の撤去費、印紙税や登記費用、利益が出た場合の譲渡所得税です。
仲介手数料は、売買価格が400万円を超える場合、原則として「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限です。ただし、2024年7月1日以降、売買価格が800万円以下の宅地・建物については、「低廉な空家等」の特例により、売主が支払う仲介手数料の上限が33万円(税込)となる場合があります。名称に「空家等」とありますが、実際に使用中か空き家かは問われません。なお、特例を適用する場合は、媒介契約を結ぶ際に、不動産会社と手数料額についてあらかじめ合意する必要があります。
そのほか、確定測量には数十万円程度かかることがあり、土地の状態によっては解体や残置物撤去などの費用も発生します。査定を依頼する際には、売却価格だけでなく、諸費用や税金を差し引いたあとに「手元にいくら残るのか」まで試算してもらいましょう。
農地のまま売る場合、買える人は原則として、農業委員会の許可を受けられる農家さんなどに限られます(農地法3条)。一方、宅地などに転用する前提で売る場合は農地法5条の許可が必要で、市街化調整区域の中や農用地区域の中の農地だと、転用のハードルが高くなります。どちらの道が現実的かは土地によって違うので、農地転用の実務に詳しい地元の会社に相談するのが近道です。
できます。事前に準備しておけば、契約や決済で現地に行く回数も最小限にできます。現地の対応や草刈りの手配、鍵の管理を任せられるのも、地元の不動産会社に頼む大きなメリットです。
10.まとめ
田舎の土地は「売れない」のではなく、売れない状態のまま、売れない値段で売りに出しているから売れない。これがほとんどのケースの実態です。この記事のポイントを整理します。
- 売りに出す前に、法規制(市街化調整区域・農地)と権利関係(相続登記・共有・境界)を整理すること。これが田舎の土地売却の8割を決めます。
- 不動産情報ライブラリや地価公示といった公的なデータで相場観を持って、適正な売り出し価格を付けること。高すぎる値付けは、時間もお金も失う一番の原因です。
- 仲介だけでなく、隣の方への打診、買取、空き家バンクなど、複数のルートを併用して、数少ない買い手に情報を届けること。
- どうしても売れない場合の国庫帰属や無償譲渡は、条件・費用・税金を確認したうえでの最終手段と位置づけること。
そして、これらを全部ひとりで進める必要はありません。同じ愛知県でも、名古屋市の中心部と郊外・山間部では、市場がまったく違います。その土地にどんな需要があるのか、規制はどう運用されているのか、買ってくれそうな人は誰か。それを一番よく知っているのは、地域に根ざした不動産会社です。
「こんな土地、相談していいのかな」という段階で構いません。固定資産税の通知が届くたびに気が重くなる前に、まずは地元の不動産会社に相談することから始めてみてください。



















