「マンションを売りたいけれど、何から始めればいいのか分からない」「いくらで売れるのだろう」「売った後に税金はいくらかかるのだろう」。初めてマンションを売却する方には、さまざまな疑問があると思います。
マンションの売却は、売り出してから成約するまで平均5ヶ月程度かかります。また、不動産会社から提示された査定価格で必ず売却できるとは限りません(参考:東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(中部圏)」)。
もう一つ注意したいのが、「売却価格=手元に残るお金」ではないということです。
特に住宅ローンが残っている場合や売却により利益が出た場合には、売却代金からローンの返済や仲介手数料、譲渡所得の税金など諸費用を支払うため、事前に手取り額を把握しておくことが大切です。
そこで今回は、マンション売却の基本的な流れから注意点、売れない場合の対処法、売却後の税金まで分かりやすく解説します。
1.マンション売却の流れ
まずは、売却の準備から引渡し、確定申告までの全体像を確認しておきましょう。
マンション売却の9ステップ
- 売却の準備をする 売買契約書・権利証・管理規約などの資料を揃える
- 不動産会社に査定を依頼する 机上査定と訪問査定。査定額の根拠を確認する
- 不動産会社を選ぶ 査定額だけでなく、地域での実績や販売戦略で選ぶ
- 媒介契約を結び、売出し価格を決める 一般・専任・専属専任の3種類。直近の成約事例も確認
- 販売活動・内覧 ポータルサイトやチラシ等で告知。内覧時の印象も重要
- 購入申込み・条件交渉 価格だけでなく、引渡し時期や資金計画も含めて判断
- 売買契約 手付金・ローン特約・契約不適合責任などを十分に確認
- 決済・引渡し 残代金の受領、ローン完済、抵当権抹消、所有権移転手続きなど
- 必要に応じて確定申告
STEP1 売却の準備をする
まずは、売却するマンションに関する資料を揃えましょう。
購入時の売買契約書や重要事項説明書は、査定時に必須というわけではありませんが、物件の詳細を確認できるため、手元にあれば準備しておくとよいでしょう。
マンション売却に必要な書類一覧
| 売主自身が用意するもの | 取得方法 | いつ利用するか |
|---|---|---|
| マンション購入時の売買契約書 | マンション購入時に取得済 | 売却契約時・確定申告時 |
| 権利証(登記識別情報) | マンション購入時に取得済 | 査定時・売却契約時 |
| マンションの管理規約 | マンション購入時に取得済 | 査定時・売却契約時 |
| 購入時のパンフレットなど | マンション購入時に取得済 | 査定時・確定申告時 |
| 設計図面関係 | マンション購入時に取得済 | 査定時・売却契約時 |
| 管理費、修繕積立金等が分かる資料 | 管理会社から取得 | 査定時・売却契約時 |
| 固定資産税課税明細書 | 毎年市役所から送られてくる通知、または市役所にて取得 | 査定時・売却契約時・確定申告時 |
| 本人確認書類 (運転免許証、マイナンバーカードなど) |
ご自身で用意 | 売却契約時・確定申告時 |
| 実印、印鑑証明書 | ご自身で用意 | 売却契約時 |
| 住民票 | ご自身で用意 | 売却契約時 |
STEP2 不動産会社に査定を依頼する
査定には、物件情報や周辺の取引事例などから価格を算出する「机上査定」と、不動産会社の担当者が実際に物件を確認する「訪問査定」があります。
査定価格は、売却を保証する価格ではありません。複数の不動産会社へ査定を依頼した際も、「最も高い査定額を提示した会社だから」という理由だけで選ぶのではなく、その査定額となった根拠をよく確認しましょう。
STEP3 不動産会社を選ぶ
不動産会社を選ぶ際には、査定額だけでなく、その地域での売却実績、担当者の説明力、広告などの販売戦略、購入希望者への情報発信力なども重要で、なにより信頼できる会社を選ぶことが大切です。
不動産は地域性が強く、同じ名古屋市内であっても、エリアや沿線、マンションによって購入者層や相場は異なります。地域の事情や購入希望者の動きをよく把握している会社を選ぶことがポイントです。
STEP4 媒介契約を結び、売出し価格を決める
不動産会社へ売却を依頼する際には、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」のいずれかの媒介契約を締結します。1社に絞って手厚いサポートを受ける「専任媒介契約」か、複数社に同時に依頼できる「一般媒介契約」かを、自分の希望に合わせて選択します。
それから、重要なのは売出し価格です。少しでも高く売りたい気持ちは当然ですが、市場相場から大きく離れた価格で売り出すと、長期間売れ残り、結果として何度も値下げすることになって、購入希望者から価格の信頼性を損なう原因にもなりかねません。
愛知県の中古マンション市況(2026年4〜6月期)
中部レインズによると、2026年4〜6月期の愛知県の中古マンション平均成約価格は2,661万円で、前年同期比11.0%上昇しました。成約件数も9期連続で増加しており、市況は時期によって変化しています。
売出し価格を決める際は、過去の相場だけでなく、直近の成約事例や市場動向も確認することが大切です。
STEP5 販売活動・内覧
媒介契約後は、不動産ポータルサイトや、チラシ、不動産会社の既存顧客への紹介などを通じて販売活動が行われます。
内覧時の印象も重要です。室内の掃除や整理整頓、不要な残置物の処分、水回りの清掃に加え、排水口などの臭いにも注意しましょう。必要に応じて清掃会社を利用するのも有効です。
一方、大規模なリフォームをしても、その費用分だけ高く売れるとは限りません。リフォームを行う前に、不動産会社へ相談することをおすすめします。
STEP6 購入申込み・条件交渉
購入希望者から買付証明書が提出されたら、価格や引渡し時期、手付金、設備、住宅ローンなどについて条件を調整します。
ここで大切なのは、価格だけで判断しないことです。
5,000万円の申込みでも住宅ローンの審査に不確定要素がある場合と、4,900万円でも資金計画が確実で売主の希望する時期に引き渡せる場合では、どちらが有利かは一概にはいえません。条件全体を見て判断しましょう。
STEP7 売買契約
条件がまとまれば売買契約を締結します。手付金、ローン特約、引渡し時期、設備の扱い、契約不適合責任の扱いなど、契約条件を十分に確認することが重要です。
雨漏り、設備の故障、過去のトラブルなど、買主の判断に影響する事項を隠して売却すると、後々大きなトラブルになる可能性があります。把握している事実は不動産会社へ正確に伝えましょう。
STEP8 決済・引渡し
決済日には、売主と買主、金融機関、司法書士、不動産会社などの関係者が手続きを進め、売買代金残額の受領と同時に、住宅ローンが残っている場合の返済、抵当権抹消の手続き、仲介手数料などの支払い、固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金などの精算を行います。
これらの手続きと同時に所有権移転の手続きを進め、売主から買主へ鍵を引き渡します。売買代金の支払いと物件の引渡しは、原則として同時に行われるのが一般的です。
STEP9 必要に応じて確定申告
マンションの売却によって利益が出た場合には、原則として譲渡所得を計算します。また、自宅マンションの売却で「3,000万円特別控除」などの特例を利用する場合には、確定申告が必要です。
他にも、所有期間10年超の軽減税率、買換え特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除などの特例の対象になる場合もあります。また、購入時の売買契約書等を紛失してしまっていても、取得費を推定することができる場合もあります。詳しくは、譲渡所得税に精通している税理士などに相談すると良いでしょう。
売却後も、購入時・売却時の売買契約書や仲介手数料の領収書などは保管しておきましょう。確定申告の際に必要になる場合があります。
2.マンション売却のお金の流れ
マンションの売却では、代金が入ってくるタイミングと、諸費用を支払うタイミングが分かれます。全体のお金の流れを確認しておきましょう。
| タイミング | 入ってくるお金 | 出ていくお金 |
|---|---|---|
| 売買契約時 | 手付金 | 印紙代など |
| 引き渡し・決済時 | 売却代金の残額 固定資産税・管理費などの精算金※ |
住宅ローン残債、仲介手数料、登記費用など |
| 売却後 | ― | 利益が出た場合の譲渡所得税・住民税 |
※精算内容によっては支払いが発生します。
3.マンションの売却が思うように進まないケース
中部レインズによると、2026年4〜6月期の愛知県では、中古マンションの新規登録が4,720件ありました。市場には継続的に新しい物件が出てくるため、売却中の物件は周辺の競合物件と比較されます。
なかなか売れない場合は、原因を確認したうえで、販売方法を見直していきましょう。
問い合わせが少ない場合
まず販売価格が周辺相場や競合物件と比べて適正かを確認しましょう。あわせて、写真を明るいものに差し替えたり、眺望や周辺環境、リフォーム履歴などの物件情報を充実させたりすることも有効です。
内覧はあるが購入申込みにつながらない場合
室内の整理整頓や清掃、消臭を行い、購入希望者が実際の生活をイメージしやすい状態に整えます。
それでも動きがない場合
仲介会社に問い合わせ件数や内覧後の反応を確認し、販売方法や売却条件を見直すことも大切です。早期売却を優先する場合は、不動産会社による買取も選択肢になりますが、仲介による売却より価格が低くなる傾向があるため、売却価格とスピードのどちらを優先するかを踏まえて判断しましょう。
4.マンション売却の失敗事例
高い査定額だけを理由に会社を選んでしまった
よくある失敗の一つが、高い査定額だけを理由に不動産会社を選んでしまうケースです。例えば5,500万円の査定を信じて売り出したものの、市場相場とかけ離れていたため問い合わせが少なく、値下げを繰り返した結果、半年以上経ってしまったうえに4,500万円で売却することになった、ということもあります。
査定額そのものより、その価格で売れそうかの根拠を確認することが大切です。
購入時の資料を紛失していた
購入時の売買契約書などを紛失し、取得費を十分に確認できなかったため、売却後の税金の計算で不利になるケースもあります。購入時・売却時の資料は大切に保管しておきましょう。
5.マンション売却のよくある質問
東京カンテイの調査によると、中部圏の中古マンションは、2025年下期で売り出しから成約まで平均5.18か月かかっています。近年は売却期間が長期化しており、直近でも5か月を超える状況が続いています。
査定や媒介契約、売買契約から引渡しまでの期間も考えると、余裕を持って売却を進めることが大切です。
必ずしも必要ではありません。リフォーム費用以上に売却価格が上がるとは限らないため、まず不動産会社に相談することをおすすめします。
可能です。実際に居住しながら販売活動を行うケースも多くあります。ただし、内覧に備えて室内を整理し、できるだけ見学しやすい状態にしておくことが大切です。
一般的には、売買契約を結んだ際に「手付金」を受け取り、決済・引渡し時に手付金を差し引いた「残代金」を受け取ります。なお、住宅ローンの返済や仲介手数料などがある場合は、決済時に売却代金から支払うため、売却代金の全額がそのまま手元に残るわけではありません。
住宅ローンが残っていても、マンションの売却は可能です。通常は、売却代金で住宅ローンを完済し、金融機関の抵当権を抹消してから買主へ引き渡します。
ただし、売却価格より住宅ローンの残高が多い場合は、差額を自己資金などで補う必要があります。不足分を用意できない場合、通常の方法では売却できないため、早めに金融機関や不動産会社へ相談することが大切です。返済が難しい場合には、金融機関の承諾を得て任意売却を検討することもあります。
マンションを売却しても、必ず確定申告が必要になるわけではありません。売却代金から取得費や譲渡費用を差し引き、利益である「譲渡所得」が生じた場合は、原則として確定申告が必要です。
また、自宅を売却した際の3,000万円の特別控除や、売却損をほかの所得と通算する特例などを利用する場合も、確定申告が必要になります。一方、売却によって損失が生じ、特例も利用しない場合は、原則として確定申告は不要です。
6.まとめ
マンションの売却は、「いくらで売れるか」だけでなく、次の点まで考えることが重要です。
- いつ売るか
- どのような条件で売るか
- 最終的にいくら手元に残るか
同じ名古屋市内でも、エリアや沿線、マンションの個別事情によって相場や需要は異なります。地域のことや購入希望者の動向を把握している、信頼できる不動産会社に早めに相談し、現在の市場を正しく把握することが、納得できる売却への第一歩です。



















